カフェ

カフェだけに言えることじゃないけれど、ひとりでいる時に聞こえてくる声は全部、自分に向けて送られた言葉じゃない。飛びかう会話は、声は、言葉は、自分じゃない誰かのもとに届けられる。でもそれは、その誰かにだけ届いているわけじゃなくて、たまたま近くにいるだけの自分にも届いている。そこの就活生にも、あっちのきれいなお姉さんにも、となりのガサガサうるさいババアにも、たぶん届いている。届いているけれど、自分はその言葉たちに対して返事をする権利を持っていない。だから、たくさんの人間がいるのに自分はその誰の中にもいなくて、世界のちょっと外側でアイスココア飲みながら誰かのリスナーやってて。そうやって全ての瞬間に勝手に届けられる声や音たちのせいで孤独になるけれど、でも誰もいないところで、声も聞こえないところで、ひとりでいるよりはいいのかもしれない。自分が人間をすきなのか、きらいなのか、どちらでもないのかが、最近よくわからない。