言葉 

言葉は万能じゃない。少なくとも、感情のすべてを表現できない。「たのしい」なら、どうたのしいのか、「苦しい」なら、どう苦しいのか。すべてを言葉で表せないくらい人のこころは繊細で幅広い。それができると言うのなら、それはただの驕りだと思う。ただ、言葉には引力のような力があって、言葉にした瞬間にこころのほうが言葉に寄っていくことがある。自分の言葉でも、他人の言葉でも。それは、すべてを表現しきれないからこそ、こころがそのズレを修正しようとしているのかもしれない。言葉が変化するのも、あたらしく生まれるのもこころの変化の表れだと思う。こころと直結しているからこそ、こんなにもいつも難しい。言葉の可能性がうれしくもあり、恐くもある。