満員電車

満員電車に乗るといやでも人のにおいがする。夕方の仕事終わりの時間帯はとくに混んでいて汗くさかったり香水くさかったり色々と混じったにおいがする。きれいな女の人からオッサンみたいなにおいがする時もあるし、汗だくのオッサンが想像よりくさくなかったりもする。くさいのは好きじゃないけれど、人間くさいのがいいなと思う時がたまにある。みんながんばって働いて、今から帰るんだなというよくわからない安心のような感情が生まれる時があって、それはぜんぜん知らない不特定多数の人たちと同じ状況を共有していることがひとつの理由かもしれない。映画館で同じスクリーンで映画を見た人たちや、同じライブに来た人たちとは少しちがうけれど、なんとなくそれに近い仲間意識を赤の他人に少しだけ感じているのだと思う。疲れているなか、電車にぎゅうぎゅうに詰められて、薄くなった酸素を独特のにおいといっしょに吸い込んでいる人たちを、みんながんばってるなぁと思える。そんな瞬間がたまにあって、その時だけその人間くささがなんかいいなと思えたりする。もちろん、これから夏場になるとそんな感情なんて吹っ飛ぶくらい、満員電車はただただ暑くてくさいんだけれど。